[Recalcification of artificially decalcified dentine in living dog teeth].

ウ蝕の保存治療に際 して軟化象牙質をどのよう に取 りあっかうかは極めて重要な問題である。従 来軟化象牙質は罹患 もしくは感染 した象牙質であ るとの考えに基づいて,す べて除去することが一 般的な臨床指針 とされていた1)『4)。しかし,ウ蝕が 深部 に達している場合,軟 化象牙質 を完全 に取 り 除こうとすると,露 髄の危険を生ずるので,む し ろ若干の軟化象牙質を残 しても露髄を避 ける方が 臨床的結果がよいのではないかとい う考 え方が生 じてきた。実際の臨床においてもすでにこの考え 方に基づいた治療が行われ始めてお り,歯 髄に何 ら炎症々状がない と判断された場合に,酸 化亜鉛 ユージノールセメン トや水酸化カルシウムなどで 間接覆髄を行って,さ らに充填を施す とい う治療 法が世界の各地で行われ,臨 床的には好成績が報 告 されている5)-13)。 このような治療を行 う場合に,窩 底に残された 軟化象牙質の中には細菌が存在 しており,そ のた めに二次ウ蝕や歯髄炎をひきおこす恐れはないか とい う疑問が 生じて くる。 こ の 問題に関 して, Basic14)はたとえ細菌が窩底の軟化象牙質の 中に 残っていても充填物や薬剤に よつ て封鎖 される と,細 菌は次第に減少しあるいは死んでしまい, ウ蝕の進行は停止すると報告 した。またKing5) らは軟化象牙質を窩底に残して酸化亜鉛ユージノ ールゼメン トや水酸化カルシウムで間接覆髄を行 い,術 前術後に細菌培養試験を行なった。その結 果この軟化象牙質は覆髄剤 によって次第に細菌が 減少 したり,殺 菌されたと報告 した。同様の報告 は他にもいくつか出されている6)8)。 ところが最近になって奥瀬15)は急性 ウ蝕の深部 では細菌の侵入よりも軟化 が先行していて,軟 化. 象牙質ではあるが,細 菌の入っていない層がかな りあり,特 に急性 ウ蝕で著 しいことを明 らかにし た。そこでこのような急性ウ蝕の軟化象牙質は一 部残 しても,必 ず しも細菌感染部を残すことには, ならないわけである。 一度 ウ蝕によって軟化 された象牙質を窩底に残